#004 "Hypertension" -PART2-
にっぽんの家庭医MLをご覧の皆様
飯塚病院、家庭医療後期研修医の吉田と申します。アメリカ・ピッツバーグ大学家庭医療部の先生方をお呼びして得た学びを”ピッツだより”としてお届けします。
第4回は、高血圧管理について、ピッツバーグ大学臨床準教授のDr. Dewarのレクチャーから学んだこと、の続編をお届けします。
"Hypertension" -Part2-”
2009年9月下旬、ピッツバーグ大学よりDr.Dewarが再び飯塚に来られました。今回は、Dr.Dewarより、高血圧に関して ①レクチャー ②症例発表 ③外来診療指導の3本立てで教えて頂きました。その症例発表の最中、会場から以下のような疑問がわきました。
我々日本の外来では、一人あたまの診療時間が少ないから、一回の診療で何をチェックするか決めておいたほうがいいと思う。何をチェックしたらよいのか。
Dr.Dewarの答えは
「なるほど、まず日米の診療形態の差があるね。確かに我々はひとりの再来患者に15分くらいかけることもあるが、それは3カ月に一度の受診だからだ。君らはひとりあたま5分かもしれないが、毎月診ている人も多いだろう。そしたら5×3=15で、一緒だよ。アメリカは遠くから来ている患者も多くて、頻回受診は敬遠されるからね。君らには何度も来てくれる患者さんが多いのならば、それを強みにしよう。では…」
と、おもむろにホワイトボードに文字を書き込む。
“S)” “O)” “A)” “P)”
「そう、今から高血圧のチェックリストをつくろう。外来でどんな高血圧の患者にもやっていることを書きだして、できたチェックリストをカルテに挟もう。これならば、少ない診療時間でも、抜けなく実行していけるよ。」
できたチェックリストはこのようなものでした。
① まず、毎回チェックするポイントです。
S. 患者に聞くこと | |
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□med list reviewed | 服薬内容 |
□adherence (are they taking medications?) | ちゃんと薬を飲んでいるか? |
□side effects | 服薬による副作用がないか |
□exercise plan | 運動をしているか |
□diet | 食事に気をつけているか |
Pertinent negatives 以下の症状がないか尋ねる
□Chest pain | 胸痛 |
□Edema | 浮腫 |
□Headache | 頭痛 |
□exercise plan | 運動をしているか |
□Vision change (check for accelerated hypertension) | 視覚障害:進行性高血圧 |
O:身体所見 | |
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Vital signs | バイタルサイン |
Neck: □bruits | 頸部雑音 |
Abdomen: □liver bruits | 腎動脈雑音 |
A: 併存症 | |
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□Hypertension | 過去の高血圧歴 |
□Hyperlipidemia | 高脂血症 |
□DM2 | 糖尿病 |
P: 検査・治療計画 | |
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□Medication per med list | 服薬リスト内の処方の見直し |
□Lipid profile | 高脂血症の検査 |
□Lifestyle counseling per checklist | リスト該当項目の生活指導 |
□Return duration | 再来の日程 |
② 次に、年に数度チェックするポイントです(日付を書いていきます)
Renal function | 腎機能 |
Lipid function | 脂質代謝 |
Exercise | 運動 |
Diet (DASH) “Dietary approach to stop hypertension” Increase dairy, more vegetables. Less sodium, more calcium, more potassium |
DASH 食の励行 |
EKG | 心電図 |
Tobacco | 喫煙状況 |
「患者ごと、項目ごとに、チェックする間隔を変えてみてもいいかもね。うん、この少ない時間でも、皆で意見を出してなかなかよいリストができた。さあ、では、実際に君たちが高血圧の外来診療で使える、チェックリストを完成させてくれたまえ。」
…これが、Dr.Dewarからの宿題でした。次回までにがんばります。
皆さんは、外来診療でチェックリストなどを使っていらっしゃいますか?
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