米国家庭医療の指導医から得た学びについて。頴田病院では、飯塚・頴田家庭医療プログラムの一環として、米国家庭医療の指導医を定期的に招聘しています。

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ピッツバーグからの学び

#013 “膝痛”

いつもお世話になっております。飯塚・頴田(かいた)家庭医療プログラム後期研修医の 吉田と申します。

今月も“ピッツだより”と題しまして、私たちが米国ピッツバーグ大学から招聘した医師から学んだことをお届けします。

前回に引き続き、今回も身体所見の話題。飯塚病院家庭医療プログラム 加藤先生と頴田病院院長 本田先生が“膝痛”について、UPMC家庭医療学部準教授のDr.Dewar(デュワー先生)にプレゼンしたセッションの模様をお届けします。病歴と診察でどれくらい膝の障害部位に迫れるか!?

(膝痛の診察)

(症例)
36歳男性。 主訴 膝痛
3カ月前から、最初は左膝内部の前側に痛みを覚えるようになり、最近になって内部の後ろ側に痛みが移動している。仕事はいつもどおりできるが、歩行時に時折痛む。1週間前の夜、左膝を伸ばしていたら、途中で膝がひっかかる感じがした。痛みは、正座をしたり、時計回りに膝を捻ったり、階段を上ったり、早歩きをしたり、雨の日にひどくなる。
外傷歴はない。アレルギー歴なし。他に内科疾患の既往なし。
デスクワーカーでスポーツはしない。3歳の娘の子育てをしており、娘とサッカーをしたり、正座を教えていると膝が痛む。

(膝の病歴について デュワー先生)
ふうむ、外傷歴のない、亜急性の膝痛ですね。急性ならば外傷や感染由来、慢性なら、特に高齢者では加齢性の変化を考えます。この症例ではそのどちらともつかないですね。
どんな時に痛みが生じるかというのが、障害部位の特定にものすごく大事ですね!! 例えば、膝蓋骨裏面軟骨の障害(膝蓋大腿関節症)であれば、階段を下りるとき、四頭筋の緊張により膝蓋骨が大腿骨頭に押しつけられ痛みます。この症例では、時計回りに膝をひねると痛いというのは、超重要です。足を衝いて筋肉の緊張がない状態で捻ると、膝内側だけ痛む。したがって、関節内で、内側の障害ということだ。例えば、内側半月板の障害じゃないでしょうか。
ロッキング(引っかかり感)について考えてみましょう。ロッキングはどこの障害でしょうか。そう、関節内部の構造的障害を意味しているんですね。
もともと、膝関節の内部は、スムーズに動くように設計されているので、これが引っかかるということは、何か関節内に異物が詰まっているということを意味しています。真の意味で外部から異物が入るのは、貫通性外傷です。他はすべて内部の構造物が壊れて関節面に引っかかるのです。例えば、前十字靱帯は切れやすく、断裂した健の一部が関節面に詰まることがあります。また、大腿骨頭の一部が剥離骨折しても詰まります。半月板損傷でも、断裂もしくは遊離した軟骨片が関節面に詰まります。
半月板損傷は、(スポーツ)外傷でとても起こりやすいです。引き金となる、一番多い動きは、膝に荷重をかけて回旋させるものです。したがって、若年者で最も多い原因はスポーツです。半月板は血管がなく、拡散で成長するため回復は困難です。本症例では、ゆっくりと症状が進んでいるため、過去の損傷が再発したか、反復・摩耗による機序を考えます。余談ですが、女性は大腿四頭筋トレーニングを男子ほどしないことと、骨盤の開き方により、男性より前十字靱帯損傷をきたしやすいです。

(診察)
膝の診察は I PASS(私は試験に受かる)だ!

Inspection(視診):まず、診察室に入ってくるときに、歩き方や変形をチェック。診察する時は、しっかりズボンを上げてベッドに寝てもらい、両膝を伸ばして左右比べながら観察する。膝蓋骨周囲の凹みが対側に比べて無くなっていれば、少量の関節水腫を疑う。

Palpation(触診): ① 滑液包の液体貯留がないか触る。両手を用いて、関節液を大腿下半および下腿から中心に向けて絞り込み、関節液が集まってこないかチェックする。
② ひざ裏を触り、Baker’s Cyst(ベーカー嚢胞)がないか触る。これは滑液が膝窩の皮下組織に脱出して、嚢胞を形成したものである。嚢胞を感じたら、鑑別として半膜様筋滑液包の拡張(正常滑液包の突出)と区別すべく、半膜腰筋滑液包の原因となる変形性関節症、関節リウマチ、半月板損傷などの所見も同時に評価する。
③ 膝蓋骨を触る、慢性的な膝蓋骨脱臼・損傷があると内側や外側に転移していることがある。膝蓋骨の前に腫瘤があれば、前膝蓋骨滑液包炎(家政婦膝: housemaid’s knee)である。
④ 腸脛靱帯遠位:これは大腿の外側を走る靭帯のバンドで、膝の外側を通り脛骨外側に付着する。膝を伸展させると、大腿骨外側顆上で動く靭帯がそれで、ランナー膝などではここに圧痛を認める。
⑤ 鵞足部滑液包:脛骨の外側で、内側側腹靭帯の付着部と薄筋、縫工筋、半腱腰筋の共通腱との間にある滑液包の圧痛がないかチェック。
⑥ 内側・外側側腹靭帯を触り、圧痛がないか見る。腱付着部もチェック。
⑦ 半月板:膝を屈曲させ、膝蓋腱両脇の内側・外側半月板間隙を触る。ここでは半月板の前角しか触れないことに注意。後角はそのまま内・外側側腹靭帯の後側の間隙で圧痛を確かめる。

Active and Passive ROM(自動および他動関節可動域)
膝の屈曲は130-150°、進展は0~-10°が正常値
① 自発ROMと、他動的ROMを調べる。他動時はクリック・ロッキングがないかチェックする。伸展は椅子に座って、屈曲は仰臥位で行う。Active(自発的)では、痛みを伴うときに患者に苦痛を与えにくい。筋肉由来の痛みでも惹起される。Passive(他動的)でも痛みが生じれば関節の痛みである。

Strength(筋力)
① 進展:大腿四頭筋:椅子に座らせ、膝を伸ばさせて上から押して筋力チェック。
② 屈曲:ハムストリング:腹臥位になり膝を90度屈曲させ、下腿を後ろに引っ張りチェック。

Special tests
① 前十字靱帯損傷:Lachman test、前方引き出し試験
いずれも、受傷早いうちにやらないと、関節内出血などで痛みが増し、筋緊張も増して陽性に出なくなりますよ。ERでやろう!!そして、どちらも患者さんの顔を見てやろう。痛がってやめてと言えば強陽性、少しでも痛がれば陽性です。Lachman testは片手で大腿と下腿をしっかり把持しないといけないので、患者が子供じゃないとできないかも。仰臥位・膝屈曲で両手で下腿を把持する引き出し試験の方がやりやすいかな。
② 後十字靱帯損傷:後方引き出し試験。チェックポイントは①とほぼ同じ
③ 内側・外側側腹靭帯損傷:Valgus stress test
それぞれ、膝に外反、内反の力を加える。これも患者さんの顔を見ながらやること。
④ 膝蓋大腿関節症候群、膝蓋骨(亜)脱臼:膝蓋骨圧迫、脱臼不安感テスト
膝蓋大腿関節症候群のテストは2つ。膝を伸ばし、膝蓋骨の四隅に指を置き、下方に圧迫すると、膝蓋骨下面に軋轢音が聞こえる。手掌を膝蓋骨中心におき、他動的に膝を屈曲させ、膝蓋骨のクリックを感じてもいい。
膝蓋骨(亜)脱臼は、膝を伸展させて、内側外側にスライドさせる。局所の痛みではなく、“脱臼しそうだよ!!”という患者さんの不安感をチェックすること。
⑤ 半月板断裂:McMurray’s test??、Squatテスト
JAMA2001 によれば、関節鏡所見を診断基準としたMcMurray’s test(マックマーリー試験)の感度は53%(-LR: 0.8)、特異度59%(+LR: 1.2)、と優れた結果は得られていません。また、半月板の軽微な断裂であれば、数日でもどってしまっていてMcMurray’s testはじめ診察所見が偽陰性になることがあります。半月板断裂の診断は、クリック・ロッキング、膝崩れなどの症状と関節局部の痛み、それから関節水腫で総合的に行います。Squatテストは、片膝をついてしゃがんでもらう。これができれば半月板断裂はないか、軽度。そのままロッキングしてしまうことがあるので注意です。

(検査について)
骨折や若い患者で骨腫瘍を疑うときはレントゲンを初診から検討します。若者の脛骨粗面の圧痛など、剥離骨折を疑うときも撮ります。高齢者の場合は、変形性関節症が多いので、最初に撮ることもあります。関節血腫、治療抵抗性、症状の増悪など、整形外科に紹介して手術を考えるときはMRIを撮ることが多いです。

(本症例の病歴と診察より)
うーん。病歴からは、膝の内旋で内側後部の痛みがあるし、ひっかかり感(ロッキング)もあるし、触診で内側側腹靭帯の後側に圧痛があるので、半月板内側後節の断裂かな。しかし、ロッキングは毎回起こるわけじゃなさそうだし、膝の屈曲伸展でも再現性がないから、多分軽度。例えば半月板の中心部は紙のように薄くなっているから、そこの部分断裂じゃないかな。関節可動域障害もないし、日常生活にも困るほどではないから、治療は、安静、鎮痛(NSAIDs頓用)、アイスマッサージかな。すぐに手術にはならないと思うが、診断確定のためにはMRIを撮ってもいい。

(答え合わせ)
患者さんは、痛みがあるので娘とのサッカーや正座は控えるようにしているという。近医整形外科に受診し、半月板損傷の疑いでレントゲンとMRIを撮った。レントゲンでは、特に骨折、骨棘、関節裂隙の狭小化・石灰化、骨の腫瘍性変化などはなし。MRIでは少量の関節液貯留と、内側半月板の後節に垂直断裂と思われる高信号を認めた。手術適応ではなく、保存的療法にて経過観察となった。

(筆者所感)
うーん。病歴ですでに障害部位がだいたい見当ついてしまっている。。。すごい。診察はそれを確認する感じだ。デュワー先生は、病歴では、外傷なら外力の加わり方、あと痛みが惹起する姿勢や運動がとても大事だと繰り返し話していた。同じことを去年マケット先生にも言われた。診察は、IPASSに沿って。今回はデモだからゆっくりやったけど、本番は同時にさっさとやるとのこと。いつも手順を覚えられないんですと言ったら、“Practice,Practice,Practice!!(練習、練習、練習だ!!)”とのこと。2回前の肩関節といい、関節痛は構造を丁寧に教えてもらうと病歴や診察所見と合致して面白いですね。さあ、練習しよっと。

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