米国家庭医療の指導医から得た学びについて。頴田病院では、飯塚・頴田家庭医療プログラムの一環として、米国家庭医療の指導医を定期的に招聘しています。

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ピッツバーグからの学び

#011 “Shoulder Pain(肩痛)”

頴田病院HPをご覧の皆様

いつもお世話になっております。飯塚・頴田(かいた)家庭医療プログラム後期研修医の 吉田と申します。

今月も“ピッツだより”と題しまして、私たちが米国ピッツバーグ大学から招聘した医師から学んだことをお届けします。

今回は、ちょっとジャンルを変えて整形の話題。飯塚病院総合診療科 江本先生が“Shoulder Pain(肩痛)”についてUPMC準教授のDr.Mackett(マケット先生)にプレゼンしたセッションの模様を会話形式でお届けします。バグダッドの野戦病院で外傷診療にあたった経験もある、筋金入りの整形系家庭医、マケット先生のコメントやいかに。。。

(肩痛)
イントロ) 江本が昔の同僚に似ているとマケット先生。彼は内科医としてホワイトハウスで大統領の主治医をしたこともある。あなたは彼にそっくりだ。

これは運命のいたずらかもしれない。
(以下、江本:えも、Dr.Mackett:Dr.Mと略称)

(症例1)
34歳男性 C.C.右肩痛
ディスカウント店で荷下ろし・荷揚げの仕事をしている特に既往のない男性。
昼まで普通に仕事をしていたが、夜中に寝るとき、右肩の激痛あり
寝られないため救急外来受診。
関節可動域に障害なし。発熱なし。
結節間溝に圧痛あり。最終診断は上腕二頭筋腱炎

えも) 特異的な診断法は?
Yergason test : 肘を90度屈曲させて、回外に対する抵抗をかけると痛み。

Dr.M) 前提として、肩関節は複雑な構造をしており、肩痛は「肩の内部」を痛がることが多く、疼痛のポイントを指し示せることが少ない。だから、このように特異的な診察をすることに意味がある。

えも) 今回は救急外来の関節エコーで上腕二頭筋腱に液体貯留あり、上記診察と合わせ上腕二頭筋腱炎と診断した。アメリカでも関節エコーはよく行われる?

Dr.M) あまりしない。本当に見たいときは、鎖骨下のMRI を撮る。

えも) 治療としてNSAIDS(非ステロイド系消炎鎮痛薬)を使用。3 日で治ったが。

Dr.M) 急性期は冷やすことが必要である。ピッチャーもしているように炎症を抑えられる。また、原因となる繰り返す動作、急激な動作を避けることも重要。作業をしばらく変えた方がよい。
NSAID はGOOD.

(症例2)
50 歳の男性。肩痛や外傷の既往はなし。
夜中寝ていて突然左肩が痛くなり、寝られず、救急車で来院。
ROM(関節可動域)は痛みのため障害され、他動的に外転させることができない。

えも) 診断は?

Dr.M) 他動的に外転できないほどの関節可動域障害は、普通は癒着性腱板炎か脱臼でしか起こらない。普通は痛いながらもある程度他動的に動かせる。腱板が切れても、肩を外転させることはできる。ただ、この人は外傷もスポーツ歴もないから考えにくい。他には、頸部痛が肩痛として感じられることもあるので、頸椎症(C4など)のSpurling テストやJackson テストはやってもいい。急激に起こるとしたら、滑液包炎ではないか。

えも) レントゲンを撮ってみたら、肩関節内に石灰化があり、石灰沈着性腱板炎と診断した。NSAIDS 処方して帰宅。

Dr.M) 何回も腕を酷使しているわけではないので、それは不思議だねえ。治療はNSAIDsとアイシングだね。あとは、早期のリハビリ。起立したまま体幹を屈曲させて下を向き、手に1~2kg の重りを握って(アイロンやペットボトルでもいい)肩を振り子のように動かす。痛みのない程度にだんだんと振り子運動を大きくしていく、これをCodman体操という。壁に2本指を歩かせるように登らせていって、肩を屈曲または外転させていくのもいい。これらの運動で、肩関節の癒着をある程度予防できる。 えも) 肩関節の診察法について、教えて下さい。

Dr.M) 昨日君が診察して見せてくれていたように…

①肩の各ポイントを同定、圧痛を確認。ただし、烏口突起は押せば誰でも痛いので陽性にとらないこと。
②外転、内転、屈曲、伸展、内旋、外旋をやってもらう
③特異的なテストを行う。

インピンジメント症候群では、Hawkinsテスト(肘を90度曲げ、強制内旋させると肩峰に痛み)は とても有効。なぜなら、この動作で肩峰下のスペースが狭くなり、腱板がひっかかるから。

インピンジメント症候群の治療法としては、以前は肩峰下の骨を削ることによりひっかかりをとる手術がされていたが、最近では、腱板の方に問題があることがわかってきている。だから、腱板の修復や脱石灰化術が行われるようになってきた。

④肩関節の安定性をチェック。患者を座位にして上腕骨を前方後方に動かしてみる。肩関節は広い可動域を確保するため、関節とは呼べないくらい関節面が浅く、腱組織も脆弱である。
肩を90度外転、肘を90度屈曲し、肘を後方、肩を 前方に動かす外力が働くと容易に脱臼する(Apprehension test)。
完全脱臼までいかなくても、anterior superior shoulder ligament(上腕骨前上方にある腱)が骨頭に押されて上方にずれると、不完全脱臼する。繰り返していると、腱が脆弱になり、脱臼しやすくなる(私のように・・・)
(マケット先生のまとめ:整形外科にコンサルトするとき)
ほとんどの骨折や脱臼など肩疾患は保存的に治せる

1.運動選手
2.手術必要例
3.すぐ脱臼を治したいとき(神経、血管障害)
4.開放骨折

では、整形コンサルトが必要

膝脱臼では、いつも膝窩動脈がやられる。すぐに整形外科と血管外科を呼べ。
足関節脱臼も血管障害を伴うことが多い、これも救急。
骨折では、骨盤骨折と大腿骨頸部骨折は出血リスクあり、整形救急

待機的手術の適応は
不安定骨折
完全なインピンジメント症候群
上腕二頭筋腱の完全断裂

などです。

昨日レクチャーで取り上げた橈骨遠位端骨折(筋肉の張力で不安定・転移しやすい)でさえ、整復がうまくいかなければ待機的に手術すればよいのです。真の意味の整形救急とは分けて考えて下さい。

Good for Your Practice!!

(筆者所感)
肩の診察は、ピッツバーグの先生が来られる度に教えて頂き、これで3回目くらいになります。マケット先生は特に、関節の解剖から各整形疾患の発生様式や診断法、治療法を教えて下さったので、頭に入りやすかったです。先生ご自身、マルチスポーツマンでかつ脱臼骨折数度の経験があられます。“私は整形疾患の歩く教科書だ”と笑いながらおっしゃっていたのが印象的でした。治療にもお詳しいので、本当に整形外科にすぐ紹介すべき状態を整理できてよかったです。私の外来でも、着実に整形診察が細かくなりつつあります。“お母さん、これは肩痛のなかでも、上腕二頭筋腱炎ですよ。(なぜかちょっと得意気)”これもピッツバーグの効果でしょうか。

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