米国家庭医療の指導医から得た学びについて。頴田病院では、飯塚・頴田家庭医療プログラムの一環として、米国家庭医療の指導医を定期的に招聘しています。

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ピッツバーグからの学び

#010 “うつ病”

いつもお世話になっております。飯塚・頴田(かいた)家庭医療プログラム後期研修医の吉田と申します。今月も“ピッツだより”と題しまして、私たちが米国ピッツバーグ大学から招聘した医師から学んだことをお届けします。

今月は、当プログラム指導医の茂木先生が、お馴染みピッツバーグ大学家庭医療学部臨床準教授のDr. Dewar(デュワー先生)を招いて行ったケースディスカッションの内容をお届けします。在宅がん患者さんのうつ病に対し、デュワー先生はどんなコメントをしてくれたのでしょうか。九州の地方都市に、米国家庭医療の風が吹き荒れる様をお楽しみ下さい。

ピッツだより⑩ “うつ病”

(症例@往診)
77歳の女性。10年前に左の乳がんと診断され、近医で手術・術後入院を受けた。手術後は、Fedrozole(アロマターゼ阻害薬)を内服していた。4年前に、乳がんが再発し、リンパ節・脳転移していることを告げられ、化学療法を受けた。半年前より腰椎骨転移に対しゾメタを開始した。同時期に画像精査で肝転移を指摘された。ADLは低下し、欧気・嘔吐により食欲低下し、外来で頻回に点滴していたが、本人の希望あり、3カ月前より在宅緩和医療を開始した。
ADLはベッド上となり、ある日落ち込んでいて、日常生活に興味を失っているようであった(以前はガーデニングが好きだった)。

処方 : フェンタニルパッチ、フェマーラ(アロマターゼ阻害薬)、ノバミン、ゾメタ注射
家族 : 夫とは死別、次男夫婦・孫1人と暮らしている
※プライバシー保護のため、いくつかの情報を変えております。

(この患者さんはうつ病か)
DSM-4の診断項目は満たしている(抑うつ気分、喜びの消失、易疲労性、無価値感、集中力の減退)。ただし、身体疾患をルールアウトすること、とある。従って、うつ病に似る鑑別疾患を挙げましょう。

特に、フェンタニルパッチが強すぎるということはよくあるし、これはすぐ治せる。

- 検査結果:Ca,Na,BUN/Cre,TSH は問題なし。3 週間後の症状出現時の採血でも、Na が131 になった以外、特に問題なし。

(がんとうつ)
慢性疾患患者のうつ病罹患率は大変高い。特にがん、脳梗塞では多い。こういったケースでは、しばしばうつが見落とされている。行動変化が数日で起こっているような場合では身体疾患が鑑別に挙がるが、うつ病の週~月単位の変化を見落とさないこと。

(がん患者のうつスクリーニングはどうしたらいいか)

(Google では、Edmonton Functional Assessment Tool で出てくる)。これらのシートを、患者さんやご家族に埋めておいてもらう。

うつスクリーニングは、がん診断の直後に始める。その時点で“あなたは抑うつですか?”と聞けば、患者さんが“ああ”と答えるのは異常ではない。その場合、2~4 週間後に再スクリーニングを行い、陽性であったらうつとして治療を開始する。

(治療)
症状に合わせて治療薬を考える。副作用が少なく、他のうつ病の効果を高めるSSRIがお勧めだ。Paroxetineは活動性を高める、Fluoxetineは沈静の効果がある。コンプライアンスを上げるため、不眠、性機能障害については十分に説明してからSSRIは開始する。不眠に悩んでいたらトラジドン、TCAを、食欲不振に対しては、食欲増進の薬を処方する。

ここで、この患者さんのディスカッションはひとまず終わり、広くうつ病というテーマで参加者の質問にDr.Dewarが答えました。

(不安を訴える在宅独居高齢者)

(リラックス療法)
井村先生:私は夜間不安・不眠を訴える患者さんに、“胸と腹に手を当て、胸と腹の動きを感じることに集中しましょう。10分間。”と教えています。

(急性疾患後のうつ病治療)
冠動脈バイパス術後、脳梗塞後、心筋梗塞後などは、高いうつ病罹患率を持っている。したがって、罹患後すぐにご家族にうつリスクを説明し、SSRIを投与することもある。脳梗塞などでは、うつ病の診断は難しいし、治療によりリハビリのモチベーションを改善できることが多い。

(認知行動療法)
自分では全部やる暇がないので、カウンセラーをその場で呼んで紹介して言ってもらっている。外来でも会話の中で短い認知行動療法はしている。

先生 :“次の受診までに何をしてみたい?”
患者:“母親の誕生日パーティあるけど、出ないでおこうかと思っているんだ”
先生:“1時間だけ、出てみない?”
みたいな。何か行動に結びつければ、いいのだよ。

(SSRIの効果)
sertralineの初回有効率は70%と言われている。つまり、3分の2は良くなるが、3分の1は良くならない。こういったときは、投与量が十分か確認し、薬を追加・変更する。特に、プライマリケア医は、薬のコンプライアンスと、投与量が足りているか十分注意します。

(精神科コンサルトの適応)

(青少年のうつ)
とても難しい。まずは、彼らの行動変化:留年した、バイトやめた などを詳しく聞く。1週間ごとの頻回なフォローをしていると、ときどき本音を言ってくれる。私は、10歳くらいの子供には、母親ではなく子供自身に語りかけ、彼らがやっている良いことを見つける。そうすると、彼らは僕たちによく話してくれるようになる。もう少し大きくなると、“親に言えない秘密”を話してもらうと、ラポールを形成することができる。アルコール・薬物依存を聞くことも重要だ。

(筆者所感)
今回のテーマはがん患者さんのうつ病でした。大学時代に腫瘍精神学の先生が“精神科的ケアはがん患者の心のかけ橋である”と仰っていたことを思い出しました。がんと診断された患者さんがうつ病になってしまうと、治療に対する意欲はもちろん、終末期の方では本来できたはずの活動、家族とのかかわりが著しく損なわれてしまいます。家庭医は外来でのがん診断から終末期の在宅緩和ケアまで、広い段階でがんの患者さんに関わりますので、うつ病を見つけるチャンスが多いはずです。今回のセッションを終えて、外来では、がんの診断と並行し、数週後の予約を入れてうつ病のスクリーニングをしたり、がん患者さんの往診では、定期的にEdmontonスケールなどを使って身体的苦痛や精神状態のチェックをしていくことができそうです。

医療法人博愛会 頴田病院

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