米国家庭医療の指導医から得た学びについて。頴田病院では、飯塚・頴田家庭医療プログラムの一環として、米国家庭医療の指導医を定期的に招聘しています。

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ピッツバーグからの学び

#008 “Angina”

飯塚・頴田(かいた と読みます)家庭医療プログラム後期研修医の吉田と申します。今回も、当プログラムにアメリカ・ピッツバーグ大学家庭医療部の先生方をお呼びして得た学びを”ピッツだより”としてお届けします。今月は、先生が行った狭心症患者のプレゼンにピッツバーグ大学家庭医療講座准教授のDr.Lincolnのコメントを添えてみました。

ピッツだより ”Angina”

(Case1)
80代女性 主訴:胸痛
数日前より2,3回の安静時胸痛あり、安静で5分で改善。胸部の重く、絞扼する感じ。
今回、安静時胸痛が5分で治まらずに救急外来へ来院。
実は3年前より数度の胸痛発作があり。ホルターECGと心筋シンチで異常なく、Ca-Blocker とアスピリン、ニトロを処方されていた。

(Anginaとは)
虚血が起こると、どうして痛みを感じるのか。
虚血により心筋細胞がアシドーシスに陥り、ブラジキニンなど多くのメディエーターを出す。それが血流に乗って、脳で痛みとして知覚される。もう一つの機序は、C7-T4の脊髄神経でありそれが肩への放散痛として知覚される。

Anginaはほとんど1分以上続くが、10分以上続くことは通常ない。続いたらAnginaではないかAMIである。運動をすると酸素需要量が増え、Anginaは増悪する。臥床でも増悪する。ニトロで改善する痛みは、AnginaかEsophageal Spasmである。

(注:Esophageal Spasm=食道攣縮、冷水嚥下やGERDなどを契機として起こる。嚥下困難や嘔吐とともに強い胸痛が起こることがある。平滑筋弛緩のため、Ca blockerなニトロ、TCAなどを処方することがある。Mayo ClinicのEsophageal Spasmより)

この症例では、安静時胸痛からはじまっており、ニトロが効かない。放散痛もない。精査は必要だがAnginaではないと思う。

(診察)
BP 190/95、HR 100、RR 20、SpO2 98%(RA)、頸静脈怒張、肺音清、心雑音なし
→血圧上昇は、痛みや不安からだけであろうか?コカイン、甲状腺中毒、AMIのいずれでも交感神経は緊張するので、鑑別が必要だ。

(心電図)
V4~6 でT 波が10mm と軽度増高しており、V2~4 でST がわずかに上昇しているように見える(ペンをあてて基線からの上昇を確かめる)。V4~6 のST 低下のパターンStrain Pattern とも言える。ER で30 分後症状のなくなったときのECG,これはV2~4 のST 上昇がすこし顕著になっているようだ。しかし、V4~6 のStrain patternは相変わらず。心原性酵素の上昇はない。
ACS を疑いはする。。。鑑別はEsophageal Spasm か。
ベースのECG があれば、ST-T の変化がわかりやすい。私だったら、高血圧患者ではまず心電図を撮って、Strain Pattern やLVH、ST 変化を見ておく。Strain Pattern があれば、高血圧を治療してから数ヶ月後に撮り直しておく。

(HTN、DM 患者のベースラインECG の利点)

(検査)
急性期の診断には、トロポニンT などもよい。
ストレステストは、ECG だと感度特異度が低く、特に女性では顕著である。シンチの方が感度特異度ともによい。CK は、本症例では上がっていないが、2 回は取り比べる。

(この患者は入院すべきか?)
たとえECG が正常でも、入院すべきだ。そしてECG,CK,トロポニンを再検査する。ピッツバーグでもACS を10%でも疑えば入院で、ER 医が主治医となる。CPA で戻ってきたら法廷沙汰になるから。
Stable Angina とはっきり診断したならば、アスピリンを持たせて帰宅させてもよい。
本症例をもし帰宅させるならば、ニトロも持たせて、症状が再発したら服用したのちにすぐにくるよう伝える。後日は必ずストレステストを行い、場合により循環器によりCAG も行う。
痛みがよくわからないときには、GI カクテル!!(抗ヒスタミン薬、制酸薬、キシロカインビスカス)などを飲ませて、症状が改善したら消化器症状を疑って帰宅の判断をすることがある。
他には、若い男性ならば、コカイン使用も疑う

(βブロッカーを使うか?)
安定性狭心症と診断すれば、メトプロロールなどを使う。この患者はCOPDがあるかもしれないがはっきりと害だというエビデンスはない。Asthmaはmayharmであるから、少し注意。急性期より始めるが鬱血性心不全や、AVブロックがあればさすがに使わない。

(Case2)
61歳男性 主訴:嘔吐下痢
数時間前より嘔吐3回下痢3回、生ものは食べていない
冷や汗があり、胸痛について聞いてみると、胸部の不快感があると言った。

(この症例で、ACSを疑うか)
もちろん、たくさんの鑑別があるが、、、、下壁梗塞や糖尿病患者ならありえる。
たとえ下壁梗塞などであっても、本当に消化器症状だけということは少ない。

(心電図)
V1~3でST上昇がありそうです。V5,6に陰性Tがあるが、非特異的変化だと思う。
ああ、ベースの心電図もあるのですね。ああ、これでも、V1~3でST上昇がありますね。
ううん、V5,6 は正常です。このV5,6の(正常T→陰性T)の変化が、虚血性といえるかどうかはProbablyくらいですね。。。

(この患者では)
過去の心電図と比較し、V5,6のST低下が見られた。心エコーで後壁の運動低下を認めた。不安定狭心症と診断し、酸素・ニトロ・アスピリン・ヘパリン・シグマート投与の上、入院した。入院後、カテを施行したが閉塞所見はなく、冠攣縮性狭心症が疑われた。

(この患者に、緊急カテの適応があるか)
TIMIスコアをつけましょう。これは、不安定狭心症や非ST上昇型心筋梗塞(UA/NSTEMI)のリスク評価を可能にするものです。スコアが高ければ、PCAのアクションにつながりやすいでしょう。

(TIMIスコア:各項目1点ずつ)

TIMIスコア 初期不良転帰(死亡、AMI、緊急PCAの必要性)が14日以内に見られる率

0または1  5%
2      8%
3      13%
4      20%
5      26%
6または7  41%

(筆者所感)
今回は、研修医の先生が、救急外来での狭心痛症例をもとに発表してくれましたが、それでも病態生理から鑑別までコメントをくれるところは流石と思いました。Esophageal Spasmに対するGIカクテル! 使ってみたいですね。特に、一般外来でコントロールの心電図を撮っておくこと(StrainPatternならば、高血圧を治療してからもう一度撮る)は、かかりつけ医として家庭医がやりやすいことであり、患者のACSの診断にも役立つよいアイデアだと思いました。

家庭医が救急医に患者のベースの心電図をすぐ送る・・・このあたりを意識して、今後の患者搬送に役立てたいです。

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